四季織 十六夜の夢
雪明 (旧・色織々)
初めて書いた時の印象と、しばらくたってから書いた時の印象が全然違うことが、ままある。例えば、このセーラーの「雪明」がそうだ。
この色を初めて使ったのは、ぼくがインクをここまでコレクションするようになる前の2010年ぐらいのこと。その時、この色は非常に薄くて使いづらい、という印象を持ったのである。
判読できないくらい薄くて、出番はあまりないだろうなとすら思った。ところが、数年後、使ってみると、これが意外にも薄く感じられない。判読不可能というほどではないのだ。もちろん、他の濃い色に比べると薄いけれども、だからといって字として読めないというレベルではない。
では、なぜ最初はあんなに薄くて読みにくいと思ったのに、今はそんな風には思わないのか。
ぼくが何となく推察するに、その他にももっと薄くて読みにくい色のインク(ペリカンのハイライターとか、セーラーのSTORiAシリーズのスポットライトとか、エルバンのブトンドールとか)を知ったので、それと比較するとそこまで読みにくくないという認識を持つようになり、ぼくの中での「雪明」に対する印象が大きく変わったのではないだろうか。
それにしても、このインクの色は実に美しい。雪明という言葉がぴったりだし、それがブルーというのもまた良い。この手の類のインクはついつい清涼感が求められる夏に使ってしまいがちだけれども、実は冬の冷えた空気にも映える色なのではないか、という気もする。
というわけで、最近ではこの色も出番が多くなりつつあり、新旧両方のボトルもそろった(新型ボトルは、万年筆のおまけ)ので、思う存分使ってみたいと思う。