ナガサワ Kobe INK物語
第23弾 長田ブルー
大学卒業後、ぼくは4年間とある紅茶会社に勤めていた。最初の3年は広報企画室で広報の仕事をしていたんだけど、4年目に突然営業職に回され、さらに大阪転勤を命じられた。
東京生まれ東京育ちのぼくにとっては、大阪は未知の世界で、それまで行ったこともなければ、友だちすらいない状態だった。
その転勤が決まったのが12月で、それからすぐに家探しが始まった。
大阪支社の人が事務的な手続きをしてくれたのだけれども、ぼくはいくつかの住みたい場所をあげた。そのうちのひとつが神戸近辺で、その時候補に挙がったのは長田地区だった。
しかし、高速道路間際の古めかしいアパートで、暗くてじめじめした印象だったので、そこは選ばずに、最終的には、東住吉区の湯里という実にマイナーな場所で一年を過ごした。
でも、長田を選ばなかったのは正解かもしれない。
なぜなら、もしそこを選んでいたら、今のぼくはいないかもしれないから。
ぼくが大阪で暮らしていたのは、1994年3月から1995年2月まで。
つまり、あの阪神大震災を経験しているのだ。
長田のアパートはひょっとしたらあの震災で完全に崩れていたかもしれない。
そう思うと、あの時あの古いアパート選ばなかったのは、何か予感のようなものがあったのかもしれないと何となく思った。
さて、そんな思い出のある長田地区をモチーフにしたこちらの色はとても渋いブルーブラック。
ちょっとマットな雰囲気が大人っぽくも感じるし、渋さもあり、落ち着いた気分で手紙を書いたり、手帳に向かったりする時に最適なんじゃないかっていう気がする。