HAPPY INK DAYS archives

インクでハッピーな毎日を彩ろう!

セーラー インク工房 100色インクをめぐる悲喜こもごも

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セーラーからインク工房という名前で、100色のインクが出るというニュースが流れたのが月曜日の朝のこと。
会員登録をしないと読めないネットニュースだったので、詳細がわからなかったのですが、その日の夕方にはセーラー万年筆から正式に告知があり、全容が明らかになりました。
その時、ぼくはぷりぷりと怒っていました。
なぜ、ぼくが怒ったのか。その理由はいくつかあります。
ぼくが頭にきた一番大きな理由は、自分が今まで雑誌やブログでインクを紹介してきたことが全否定されたような気がしたから。
ぼくは、インクというのは、単なる、とかとかターコイズというのではなくて、作り手のこだわりだったり、そのインクの背景だったりストーリーだったりコンセプトだったりするものがあるから人々はそこに共感してインクを買うものだと思っていたのです。
そして、このブログ「Happy Ink Days」も、そういったところに焦点を当てて、ぼくなりの視点でインクを紹介してきました。
ところが、今回発売される「インク工房」の100色は、色に名前もつけておらず、単なる識別ナンバーだけ。さらにインクに対するストーリーやコンセプトは一切無視。
今まで石丸さん一人一人のオーダーを聞いて作ってきたり、いろいろなお店のオリジナルインクを作っていたりしてきたセーラーがそんなことをして良いの?と正直、がっかりしました。
ぼくがどれほどショックだったかというと、雑誌の連載も、このブログも、すべて中止して、金輪際インクのことは一切語らず、なんだったら集めたインクをすべて処分してしまおうかしら。
と思ったくらいショックでした。
ところが、一晩たって、あるフォロワーさんの一言にぼくは、目から鱗が落ちたのです。
「素材というのは、あくまでも素材であって、無機質な方が私は好感が持てる」
その言葉はそれまでインクというのはストーリーありきというのが基本、という固定概念をがらっと取っ払ってくれたのです。
そういえば、学生の時に使っていた絵具もそんな感じでしたよね。
単に、、みたいに単純な色名がついていた。
そしたら、インクだって、そういうのはありなのではないか。
色名を100色考えるのは大変だから、識別番号にしたんだろうから、それはそれで問題はないはずだし。
そう思えるようになってから、ちょっとぼくの気持ちは落ち着いてきました。
でも、それでもやっぱり複雑な想いではいたのです。
ぼくはインクの背景にあるものを紹介したいから、このブログをやっているわけで、そうなると、今度の100色はそれとはまったく違うコンセプトだから、紹介することはないんじゃないかって。
だったら、ぼくはこの100色インクは買わない!とTwitter上で宣言してしまったほど。
そして、昨日の夜、ふとね、「逆コンセプトインク」という位置づけにしたらどうだろうか?って思ったのです。
つまり、今までは、先にそれぞれのインクに背景があって、それをブログで紹介してきたけれども、この100色に関しては、先に色があって、そこにぼくなりのストーリーをつけていく というもの。
もちろん、それは、ぼくが勝手に妄想するものであるから、その色を見て、他の人はまったく別の風景やストーリーを思い浮かべるだろうけど、ぼくはこの色からこういうストーリーや名前を作ってみました、と提言するの。
そう考えたら、ものすごくこの100色に興味を持つことができました。
だって、せっかくインク沼の深いところに生息しているんですもの、こうなったら、とことん楽しむしかないじゃない?
そんな気分で、本日、先行発売当日を迎えたのでした。
100本のインクだから、さぞかし大々的に置かれているだろうと思ったら、もともとミニボトルということもあり、実際の売り場はそんなにどでかい、という感じではありませんでした。
でも、やっぱり売り場によっては、これだけの什器(4本を入れられるようになっている引き出しが100個分という感じ)を置くのは大変かなという感じもしました。

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でもね、やっぱり100色というのはインパクトもあるし、選ぶ楽しみもあるので、これはこれで面白いなと思ったの。
例えば、売り方として、10色ずつを10か月で出すとか、コンセプトをそれぞれ作ってちまちま売るというようなことを考えたけど、それだと今までとあまり変わりなくて、インパクトに欠ける。
それだったら、100色をどーんと出した方が良い。というセーラーの判断は正しかったんじゃないかって思ったのです。
あとね、やっぱり買う方はいろいろなことを想いながら買うわけですよ。
特にインクに想い入れの強い人なんかは。
何系の色から揃えていこうかなとか、自分はこの色は買うけど、これは買わないだろうなとか。
ぼくが今日考えたのは、どうせ全部揃えるんだったら、一気に全色買う(長崎の石丸文行堂さんのカラーバーインクを買った時のように)のではなく(それはそれでインパクトはあるだろうし、そんなことをするのはそんなにたくさんいないだろうけど)、少しずつ買い足して行こうかなっていう気がしたのであります。
そこで、ぼくなりのルールというか、決まりを作りました。
1度に買うのは5本まで。
それも、下記の表で、ピンクの枠で囲ったグループの中から1本ずつ計5本を20回にわけて購入する。

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というマイルールです。
それをフォロワーさんに言ったら、「20日間毎日通うんでしょ?」と言われてしまいましたが、今のところその予定はありません(笑)。
少しずつ、少しずつ、増やしていくという楽しみを味わうのもインク沼の住人としての醍醐味なんじゃないでしょうか。
まぁ、これは、全色購入することが前提ではあるわけですが。
で、そうやってぼくは今日発売記念に5本を選んだのですが、こちらの一覧と実際の色見本は違うので、選ぶのも一苦労。

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でもね、それをああでもない、こうでもないと選んでいる時に、隣にいた二人の女性のお客さんの会話が耳に入ってきたのです。彼女たちはどうやらまだ万年筆は初心者の模様。でも、それほどインクのことは知らないという感じ。でも、この100色のインクを見て、「まるで色鉛筆みたい!」とはしゃぎながらインクを手に取っていたのです。
それを聞いて、こうやって少しずつでもインク、万年筆文化が広まっていけば良いなっていう気がしました。
石丸ブレンダーのインク工房に並んだり、ご当地インクを買ったり、限定インクを買うために朝早くから行列したり、さらにはミクサブルインクで自分の好きな色を作っちゃうというのは、かなり特殊なこと
一般の人たちからすると「何をそこまで熱くなっているの?インクなんてと黒だけで十分でしょ?」という意見が圧倒的に多いはず。
でも、そういう人たちに少しでもカラフルインクを気軽に楽しんでもらえれば、それはそれで良いんじゃないかっていう気がしたのです。
ただ、ひとつだけ言わせて!
「インク工房」という名前は、石丸ブレンダーのインク工房と被るのは、混乱する人も出てくる可能性もあり、それだけは少し工夫して欲しかった。
「色彩事典(いろじてん)」「色採集(いろさいしゅう)」「色彩百科事典」などなど、いろんな切り口で名前をつけることはできたはず。
でも、もっと無機質にしたいというのであれば、むしろセーラー100カラーズの方がシンプルで良かったのではないかと思います。
ともあれ、このインク工房を巡って、今週の前半はなんだかぐったりと疲れてしまいましたけれども、でも、結果として、ぼくはセーラー万年筆が国産の万年筆メーカーの中で一番好きなので、応援するという意味で、これからもこの100色のインクを愛用していきたいなと思った次第であります。
もちろん、インクマニアや石丸ブレンダーのインク工房に思い入れのある人たちは、到底受け入れることはできないと思う人もいるでしょう。そういう人たちのことをぼくは否定することはしません。むしろそういう考え方があっても当然のことだと思います。ぼくだって最初はそう思っていたんですから!
人それぞれ、インクとのお付き合いの仕方はあると思いますので、その中でみんな楽しみましょうよ!というぼくのスタンスは変わらないことは明記しておきたいと思います。

というわけで、今回買った5色のインク。

果たして、どんな色か?というのは来週以降じっくりとぼくなりのストーリーを考えながらご紹介したいと思うのでお楽しみに!